破壊試験による木材物性の研究
木材の人工乾燥は、蒸煮工程と乾燥工程からなります。 既往の研究により、乾燥工程における熱劣化が明らかにされていますが、蒸煮工程についてはあまり調べられていません。 そこで、人工乾燥における蒸煮工程を想定し、湿潤状態で熱処理を施した生材を対象に研究を行っています。 J積分に基づく試験法(V. C. Li et al. 1987)を適用し、応力低下曲線を求めることによって木材の熱劣化を評価しています。
右図:初期き裂を入れた試験体を上下に引張り、荷重と荷重点変位とき裂先端開口変位を測定している様子
き裂の進展を評価するには全視野的なひずみ計測が効果的です。 デジタル画像相関法(DIC)を利用することにより、木材のき裂先端のひずみ分布を効率的に得ることができます。
日本では古来より、スギ・ヒノキを使用した長いスパンの林業が行われてきました。しかし、現在、短いスパンで生育する「センダン」という樹木を用いた早生樹林業が注目を浴びています。そこで、センダン材活用法の一つとして考えられるパーティクルボードを作製し、その特性評価を行っています。曲げ試験や厚さ膨潤試験などの力学的試験・物理的試験を行う一方で、センダンはシロアリに強いと言われているため、耐蟻性試験なども行っています。
右図:センダン材を使用したパーティクルボードの曲げ試験の様子
センダンの内装材用途としての可能性を検討するため、高温熱処理材の熱伝導率や吸湿量を調べています。また、高温熱処理による木材細胞実質の微細空隙構造の変化を調べ、熱伝導率との関係について考察します。
右図:センダン無処理材とサーモ処理材
木材は非均一な材料であることから破壊過程は非常に複雑です。そのためその挙動を一義的に表現するのは困難ですが、本研究では木材の破壊はその進展に伴い破壊のステージが変化していくと考え、さらにその過程は複数のワイブル分布関数を用いることで記述できると考えました。この考えに基づいて、引張軟化曲線の"マルチワイブル分布関数"を用いた解析を行っています。含水率や熱処理温度を変化させた試験体を用いて破壊試験を行い、それらの変化が破壊の段階ごとにどう寄与するのかを、ワイブル分布関数パラメータによって評価しています。
右図:破壊過程の応力―ひずみ曲線の例